組織から個へ――これからの働き方に必要な“デジタル整理力”とは
執筆:デジタル整理アドバイザー2級認定講師 横田 敦子

働き方改革が進み、在宅勤務やテレワークが定着したことで、働く場所や時間はかつてないほど自由になりました。しかし、この環境の裏には見落としがちな「盲点」が潜んでいます。それが、パソコンやクラウド上にある「見えない空間」の情報管理です。
仕事をする場所の自由度が高まった今、あなたのパソコンの中はすっきりと整理されているでしょうか。
デジタル整理力とは、「必要なデータを、必要なときに、必要な人がすぐに取り出せる状態を維持する力」のことです。 この力は、仕事の効率だけでなく、信頼や成果にも大きく関わります。
今回は、企業勤務でデータ管理に向き合ってきた経験をもとに、これからの時代に欠かせない「デジタル整理力」の本質についてお伝えします。
- 1. 1.働き方は「組織中心」から「個人中心」へ
- 2. 2.なぜ今、デジタル整理力が必要なのか
- 2.1. 2-1.個人で情報管理する機会が増えている
- 2.2. 2-2.探す時間が生産性を下げる
- 2.3. 2-3.情報共有の質が仕事の質を左右する
- 3. 3.デジタル整理力がある人・ない人の違い
- 3.1. 3-1.ファイルが見つかる人
- 3.2. 3-2.データが埋もれる人
- 3.3. 3-3.キャリア形成にも影響する理由
- 4. 4.これからの時代に必要なデジタル整理習慣
- 4.1. 4-1.目的に応じてデータを整理・分類する
- 4.2. 4-2.フォルダ管理・ファイル整理の基本
- 4.3. 4-3.継続できる仕組みづくり
- 5. 5.これからの働き方に備えてデジタル整理を始めよう
1.働き方は「組織中心」から「個人中心」へ

社会全体で働き方改革が推進され、毎日オフィスへ通い、自席のパソコンで仕事をすることが当たり前だった時代は大きく変わりました。副業に挑戦したり、フリーランスとして独立したりと、キャリアの選択肢も多様化しています。
これは、「組織」の中で働くスタイルから、「個人」が主体となる働き方へのシフトを意味します。組織が整備した環境に頼るだけではなく、自分自身で仕事環境を整え、効率的に情報管理を行う力が求められる時代になりました。
その土台となるのが、データ整理やファイル整理を適切に行う「デジタル整理力」です。
2.なぜ今、デジタル整理力が必要なのか
私自身、企業でデータ管理に携わる中で、「デジタル整理ができているかどうか」が業務効率や顧客対応を大きく左右する場面を何度も経験してきました。働く場所や働き方が多様化した今だからこそ、デジタル整理力は一部の人だけではなく、すべてのビジネスパーソンに必要なスキルになっています。
その理由を3つの視点からご紹介します。
2-1.個人で情報管理する機会が増えている
リモートワークやクラウドサービスの普及により、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットなど複数の端末で仕事をする人が増えました。場所を選ばず働ける一方で、個人の責任でデータを管理する場面も急増しています。
手元のデータは単なる作業記録ではありません。チームやお客様と連携して仕事を進めるための大切な資産です。だからこそ、データ整理やファイル整理のルールを持つことが重要になります。
デジタル整理は、個人の作業効率だけでなく、チーム全体の生産性を高めるための基盤でもあります。
2-2.探す時間が生産性を下げる
「あの資料、どこに保存したかな?」と探す時間は、1回あたりは数分でも積み重なれば大きなロスになります。
問題は時間だけではありません。探している間に思考が途切れ、本来集中すべき業務へのエネルギーが奪われてしまいます。
デジタル整理によって「探す時間」を減らすことは、生産性向上への近道です。
2-3.情報共有の質が仕事の質を左右する
私が以前勤務していた会社で、実際に起こった出来事です。
ある日、お客様から送付したレターについて問い合わせ(クレームに近い内容)が入りました。対応スタッフが共有フォルダを検索しても該当データが見つかりません。
レターの作成担当者はその日から長期休暇で海外におり、連絡も取れない状態でした。実はデータは共有フォルダではなく、担当者のパソコンのローカル環境に保存されたままだったのです。
内容が分からないため返答できず、上司がお客様へ直接お詫びをして時間を稼ぎ、残されたスタッフが過去の履歴から内容を必死に推測して対応しました。
原因は、「下書きは自分のパソコンで作り、完成したら共有フォルダへ保存する」という曖昧な運用ルールでした。
そこで、「下書きの段階から共有フォルダ内で作成する」というルールへ変更したところ、このようなトラブルは発生しなくなりました。
デジタル整理は単なる片付けではありません。情報共有を円滑にし、組織全体のリスクを減らす仕組みづくりでもあるのです。
3.デジタル整理力がある人・ない人の違い

デジタル整理力は、単にパソコンの中をきれいに片付けるためのスキルではありません。必要な情報へすぐにアクセスできる環境を整えることで、仕事のスピードや判断力、情報共有の質が大きく変わります。
その結果、日々の業務だけでなく、周囲からの評価やキャリアにも少しずつ違いが表れてきます。ここでは、デジタル整理力がある人とない人の違いを具体的にご紹介します。
3-1.ファイルが見つかる人
デジタル整理のルールが身についている人は、必要なデータへ数秒でアクセスできます。
フォルダ整理やファイル整理のルールが明確なため、「探す」という行為そのものがほとんどありません。タイムロスがない分、重要な仕事へ集中でき、高いパフォーマンスを維持できます。
3-2.データが埋もれる人
一方、ルールを持たないままパソコンを使っていると、中身はあっという間に「データの迷路」になります。
「とりあえずデスクトップに保存」「あとで整理しよう」を繰り返すことで、必要なデータが埋もれてしまいます。
データ整理やフォルダ整理ができていない状態は、自分の時間を奪うだけでなく、周囲に迷惑をかける原因にもなります。
3-3.キャリア形成にも影響する理由
ビジネスにおいてデジタル整理は、信用を守るためのリスクマネジメントでもあります。
どこにいても高い生産性を維持し、必要な情報を素早く提供できる人は、組織でも高く評価されます。
また、副業やフリーランスとして仕事を受ける場合も、的確なデータ管理と迅速なレスポンスは、プロとしての信頼につながります。
4.これからの時代に必要なデジタル整理習慣
デジタル整理力は、一度身につければ仕事の効率や情報共有の質を高め、長く役立つスキルです。しかし、難しい仕組みをつくる必要はありません。大切なのは、自分やチームが迷わずデータを活用できる、シンプルで続けやすいルールをつくることです。
ここでは、今日から実践できるデジタル整理の習慣をご紹介します。
4-1.目的に応じてデータを整理・分類する
デジタル整理の第一歩は、「業務で日常的に使うデータ」「保管義務があるデータ」「削除できるデータ」などと整理することです。
何でも保存するのではなく、「何のために使うデータなのか」「今後も必要になるのか」という目的を意識して分類することで、データは格段に管理しやすくなります。
4-2.フォルダ管理・ファイル整理の基本
検索しやすい環境をつくるためには、フォルダ構成やファイル名のルールを統一することが重要です。
誰が見ても分かるフォルダ整理を心掛けることで、自分だけでなくチーム全体の業務効率も向上します。
また、先ほどご紹介したように「下書きの段階から共有フォルダで作成する」といった運用ルールを決めることも、属人化を防ぐ大切なポイントです。
4-3.継続できる仕組みづくり
どんなに優れたルールでも、続かなければ意味がありません。
挫折しないコツは、「未来を見据えたスモールスタート」です。
過去の膨大なデータを一度に整理しようとすると、途中で手が止まってしまいます。まずは「今日作成するファイルから新しいルールを適用する」と決めるだけでも十分です。
さらに、ショートカットキーやクラウドサービスなどを活用すれば、日々の作業効率も大きく向上します。
5.これからの働き方に備えてデジタル整理を始めよう
働き方が多様化し、副業やフリーランスという選択肢が身近になった今、デジタル整理力は特別なスキルではなく、すべてのビジネスパーソンに求められる基礎力になっています。
また、DXや生成AIを活用する企業が増える中でも、整理されていないデータからは十分な成果を引き出すことはできません。AIを活かすためにも、まずはデータ整理・ファイル整理・フォルダ整理の仕組みを整えることが重要です。
「デジタル整理アドバイザー2級認定講座」では、検索しやすいフォルダ設計やファイル命名のルール、データ整理の基本、継続できる管理方法など、仕事ですぐに役立つ実践的なデジタル整理術を体系的に学ぶことができます。
本講座は、経済産業省が推進する「マナビDX」にも掲載された安心のカリキュラムです。
これからの働き方をもっと快適に、もっと自分らしくするために、まずは「探し物ゼロ」のデジタル環境づくりから始めてみませんか。

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このコラムを書いた人:横田 敦子(デジタル整理アドバイザー2級認定講師)
証券会社トレーダーや外資系企業でのコンサル・コンプライアンス部門などを経て独立。多忙な会社員時代に「環境が整っていないと最高のパフォーマンスは発揮できない」と痛感した経験を活かし、整理収納・デジタル整理の認定講師へ。QOLや業務効率を上げる実践的な「仕組み作り」を伝達し、一人ひとりのライフスタイルに合わせた環境構築を伴走支援。現在はKドラマ鑑賞や旅行など、趣味を全力で楽しむ軽やかな毎日を送る。
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